
管理業務主任者が必要な理由やできることを知りたいな。
似たような資格でマンション管理士があるけど、違いがよくわからないな…
管理業務主任者は、主に分譲マンションを管理しているマンション管理会社にとって必須の国家資格(業務独占資格)です。
管理業務主任者がマンション管理会社に居ないといけないこと、管理業務主任者にしかできない業務があるからです。
管理業務主任者という資格について、よくわからないという人は、ぜひ最後まで読んでください。
当記事では、管理業務主任者という資格の概要を解説します。資格のことを知ることが受験を考えている人にとって、合格への第一歩となります。
管理業務主任者試験の概要【なぜ必要?有資格者ができることの解説】
「管理業務主任者」とは、マンション管理業者が管理組合等に対して管理委託契約に関する重要事項の説明や管理事務報告を行う際に必要な国家資格者のことです。
一般社団法人マンション管理業協会HPより
「管理業務主任者」となるには、管理業務主任者試験に合格し、管理業務主任者として登録し、管理業務主任者証(以下「主任者証」という)の交付を受けることが必要です。
管理業務主任者資格の成立について
管理業務主任者は、2000年に制定された「マンションの管理の適正化の推進に関する法律」(以下、マンション管理の適正化法)に基づき成立しました。
同時にマンション管理士の資格も定められることになりました。
資格が成立することになった目的は、第1条に明記されています。
マンションの管理の適正化の推進に関する法律
e-Gov法令検索より
第1条 この法律は、土地利用の高度化の進展その他国民の住生活を取り巻く環境の変化に伴い、多数の区分所有者が居住するマンションの重要性が増大していることにかんがみ、マンション管理士の資格を定め、マンション管理業者の登録制度を実施する等マンションの管理の適正化を推進するための措置を講ずることにより、マンションにおける良好な居住環境の確保を図り、もって国民生活の安定向上と国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。
マンション管理業者の登録制度を実施して、マンション管理の適正化を推進するための措置の中に管理業務主任者という資格が組み込まれたということです。
管理業務主任者試験の内容
管理業務主任者試験の内容は次の通りです。
試験日程
例年、12月の第1日曜日が試験日となります。
ちなみに11月の最後の日曜日がマンション管理士の試験となりますので、2週連続で受験するという人もいます。
2022年度の試験日程 | |
受験申込案内配布期間 | 2022年8月1日(月)〜2022年9月30日(金) |
受験申込受付期間 | 2022年9月1日(木)〜2022年9月30日(金) |
試験日 | 2022年12月4日(日) 13:00〜15:00 |
合格発表日 | 2023年1月20日(金) |
受験申込は、必要書類を郵送となります。
申込最終日の当日消印まで有効ですが、余裕をもって申し込みましょう。
ネット申込はできないため注意してください。
試験地
試験地は、北海道、宮城県、東京都、愛知県、大阪府、広島県、福岡県、沖縄県の全国8カ所です。
受験申込時に試験地は選べますが、試験会場を選ぶことはできず、受験票が届くまで、どこの会場になるかはわかりません。
とはいえ、過去に開催されたことのある試験会場は、大学キャンパスです。
各試験地の主要な大学キャンパスが選択されることが多くなっています。
管理業務主任者の前週に実施されるマンション管理士と同じ試験会場になることもあります。
2週連続で同じ受験会場になれば、若干有利に試験に望むことができます。
受験要件
管理業務主任者試験の受験をするために特別な要件・資格はありません。
年齢、学歴など関係なく、誰でも受験できます。
※合格後に登録をする際には、管理事務の実務経験2年以上もしくは、実務登録講習修了が必要です。
受験料
受験料は、8,900円(非課税)です。
管理業務主任者試験の受験料には、消費税がかかりません。
資格試験の受験料に対する消費税の取扱については以下の記事で詳しく解説しました。非課税の理由を知りたい方は参考にしてください。
»【課税・非課税】資格試験の受験料と消費税の関係【国家資格・民間資格】
試験の出題範囲
出題範囲は、「マンションの管理の適正化の推進に関する法律施行規則」(以下、施行規則)第64条の規定に基づきます。
マンションの管理の適正化の推進に関する法律施行規則
e-Gov法令検索より
第64条
前条の基準によって試験すべき事項は、おおむね次のとおりである。
1 管理事務の委託契約に関すること。
2 管理組合の会計の収入及び支出の調定並びに出納に関すること。
3 建物及び附属設備の維持又は修繕に関する企画又は実施の調整に関すること。
4 マンションの管理の適正化の推進に関する法律に関すること。
5 前各号に掲げるもののほか、管理事務の実施に関すること。
想定される管理業務主任者試験の内容は、以下の通りです。
一般社団法人マンション管理業協会HP(Q&AのQ18)より
マンションの管理の適正化の推進に関する法律施行規則第64条で規定されている項目 | 想定される管理業務主任者試験の内容 |
1.管理事務の委託契約に関すること |
民法(「契約」及び契約の特別な類型としての「委託契約」を締結する観点から必要なもの)、マンション標準管理委託契約書等 |
2.管理組合の会計の収入及び支出の調定並びに出納に関すること | 簿記、財務諸表論 等 |
3.建物及び附属設備の維持又は修繕に関する企画又は実施の調整に関すること | 建築物の構造及び概要、建築物に使用されている主な材料の概要、建築物の部位の名称等、建築設備の概要、建築物の維持保全に関する知識及びその関係法令(建築基準法、水道法等)、建築物の劣化、修繕工事の内容及びその実施の手続に関する事項等 |
4.マンションの管理の適正化の推進に関する法律に関すること | マンションの管理の適正化の推進に関する法律、マンション管理適正化指針 等 |
5.1.から4.に掲げるもののほか、管理事務の実施に関すること | 建物の区分所有等に関する法律(管理規約、集会に関すること等管理事務の実施を行うにつき必要なもの)等 |
出題形式・出題分野(出題科目)・出題数
・出題分野は法令、管理実務・会計、建築・設備系
・出題数は50問
出題形式は、4つの選択肢から1つを選びマークシートに記入する方法です。
出題分野は大きく、法令の分野から4科目(マンション管理の適正化法・区分所有法等、標準管理規約、民法その他の法令)管理実務・会計の分野から2科目(管理事務、会計)建築・設備系から2科目(建築・設備、設備系法令)です。
2020年度試験の出題状況をまとめた一覧は、下記の通りです。
【法令】(27問)
出題科目 | 出題数 |
マンション管理の適正化法 | 5問(免除規定の対象) |
区分所有法等 | 8問 |
標準管理規約 | 4問 |
民法その他の法令 | 10問 |
【管理実務・会計】(11問)
出題科目 | 出題数 |
管理実務 | 8問 |
会計 | 3問 |
【建築・設備系】(12問)
出題科目 | 出題数 |
建築・設備 | 6問 |
設備系法令 | 6問 |
免除制度について
管理業務主任者の試験では、一部免除という制度があります。
具体的には、マンション管理士に合格している人が受験をするときに、申込時に一部免除の申請をすることにより、マンション管理の適正化法の5問が免除(正解として扱われる)となります。
とはいえ、マンション管理士に合格することは管理業務主任者試験に合格するよりも難しいため、一部免除の適用を受ける人は少ないといえます。
合格率
直近、5年間の合格率は以下の通りです。
年度 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 | 合格点 |
2018年 | 16,249人 | 3,531人 | 21.7% | 33点 |
2019年 | 15,591人 | 3,617人 | 23.2% | 34点 |
2020年 | 15,667人 | 3,739人 | 23.9% | 37点 |
2021年 | 16,538人 | 3,203人 | 19.4% | 35点 |
2022年 | 16,217人 | 3,065人 | 18.9% | 36点 |
合格率は、おおむね20%超というラインとなっています。
出題数50問中35点前後、つまり7割正答できれば合格できるかという試験です。
合格率や難易度については、以下の記事で詳しく解説しました。管理業務主任者の合格率や難易度に関して詳しく知りたい人は参考にしてください。
»【合格率・難易度・勉強時間】管理業務主任者試験について【他不動産3資格との比較】
管理業務主任者がマンション管理会社に必要な理由
(管理組合30組合につき1名以上)
管理業務主任者がマンション管理会社に必要な理由を解説します。
先に根拠となる条文(マンション管理の適正化法・施行規則)を示します。
マンションの管理の適正化の推進に関する法律
e-Gov法令検索より
(管理業務主任者の設置)
第56条
マンション管理業者は、その事務所ごとに、事務所の規模を考慮して国土交通省令で定める数の成年者である専任の管理業務主任者を置かなければならない。ただし、人の居住の用に供する独立部分(区分所有法第一条に規定する建物の部分をいう。以下同じ。)が国土交通省令で定める数以上である第二条第一号イに掲げる建物の区分所有者を構成員に含む管理組合から委託を受けて行う管理事務を、その業務としない事務所については、この限りでない。
マンションの管理の適正化の推進に関する法律施行規則
e-Gov法令検索より
第二節 管理業務主任者の設置
(法第五十六条第一項の国土交通省令で定める管理業務主任者の数)
第61条
法第五十六条第一項の国土交通省令で定める管理業務主任者の数は、マンション管理業者が管理事務の委託を受けた管理組合の数を三十で除したもの(一未満の端数は切り上げる。)以上とする。
マンション管理業を行うとき、事務所ごとに、成年者の専任の管理業務主任者が必要となります。(マンション管理の適正化法第56条)
さらに、管理事務の委託を受けている管理組合30組合につき1名以上の成年者の専任の管理業務主任者が必要となります。(施行規則第61条)
ざっくり言うと、管理している分譲マンション30棟までなら、専任の管理業務主任者が1名必要となります。
つまり、マンション管理会社には専任の管理業務主任者が必要であり、また、管理業務主任者にしかできない業務があるため、管理業務主任者の資格を持っていると資格手当が付く会社が多いです。
資格手当については、専任登録をするかで変わったりする場合もありますが、5,000〜20,000円程度の範囲が多いといえます。
管理業務主任者の独占業務
・重要事項に関する書面への記名・押印
・管理受託契約書への記名・押印
・管理事務に関する報告
管理業務主任者の独占業務は4つあります。
4つの業務は、管理業務主任者にしかできないことです。
根拠条文とセットで解説します。
【管理受託契約締結前の重要事項説明】
マンションの管理の適正化の推進に関する法律
e-Gov法令検索より
(重要事項の説明等)
第72条
マンション管理業者は、管理組合から管理事務の委託を受けることを内容とする契約(新たに建設されたマンションの当該建設工事の完了の日から国土交通省令で定める期間を経過する日までの間に契約期間が満了するものを除く。以下「管理受託契約」という。)を締結しようとするとき(次項に規定するときを除く。)は、あらかじめ、国土交通省令で定めるところにより説明会を開催し、当該管理組合を構成するマンションの区分所有者等及び当該管理組合の管理者等に対し、管理業務主任者をして、管理受託契約の内容及びその履行に関する事項であって国土交通省令で定めるもの(以下「重要事項」という。)について説明をさせなければならない。この場合において、マンション管理業者は、当該説明会の日の一週間前までに、当該管理組合を構成するマンションの区分所有者等及び当該管理組合の管理者等の全員に対し、重要事項並びに説明会の日時及び場所を記載した書面を交付しなければならない。
マンション管理会社は、管理組合とマンション管理の受託契約する前に、どのような契約内容か管理組合に対して事前説明が必要です。
この事前説明(重要事項説明)は、管理業務主任者にしかできないのです。
ちなみに管理組合は、例えば分譲マンションの場合、各部屋の所有者の集まりだと思ってください。
【重要事項に関する書面への記名・押印】
マンションの管理の適正化の推進に関する法律
e-Gov法令検索より
第72条5 マンション管理業者は、第一項から第三項までの規定により交付すべき書面を作成するときは、管理業務主任者をして、当該書面に記名押印させなければならない。
上記の重要事項説明書類への記名・押印は、管理業務主任者が行います。
【管理受託契約書への記名・押印】
マンションの管理の適正化の推進に関する法律
e-Gov法令検索より
(契約の成立時の書面の交付)
第73条2 マンション管理業者は、前項の規定により交付すべき書面を作成するときは、管理業務主任者をして、当該書面に記名押印させなければならない。
契約書への記名・押印は、管理業務主任者が行います。
【管理事務に関する報告】
マンションの管理の適正化の推進に関する法律
-Gov法令検索より
(管理事務の報告)
第77条 マンション管理業者は、管理事務の委託を受けた管理組合に管理者等が置かれているときは、国土交通省令で定めるところにより、定期に、当該管理者等に対し、管理業務主任者をして、当該管理事務に関する報告をさせなければならない。
2 マンション管理業者は、管理事務の委託を受けた管理組合に管理者等が置かれていないときは、国土交通省令で定めるところにより、定期に、説明会を開催し、当該管理組合を構成するマンションの区分所有者等に対し、管理業務主任者をして、当該管理事務に関する報告をさせなければならない。
管理組合の事業年度終了後遅滞なく、管理業務主任者が管理事務に関する報告を行います。
管理業務主任者試験とマンション管理士との違い
→マンション管理会社に必要な国家資格(業務独占資格)
・マンション管理士
→管理組合の立場側で管理組合に助言等をする国家資格(名称独占資格)
管理業務主任者とマンション管理士は、マンション管理の適正化法によって制定された国家資格です。
どちらの試験も試験範囲がそれほど変わらない資格です。
両方を取得する人が多い資格ですが、異なるのは、資格の立ち位置です。
管理業務主任者は、マンション管理会社に必要な資格なのに対して、マンション管理会社は、管理組合側の立場で助言等を行うことを目的としています。
ただし、管理組合に助言等を行うのはマンション管理士でなくてもできます。
例えば、弁護士・税理士・建築士といった人が管理組合から依頼を受けて助言等をすることです。
マンション管理士という国家資格は、名称独占資格です。
名称独占資格とは、名称を使うことができるということです。
マンション管理士ではない人がマンション管理士を名乗ることはできません。
つまり、管理業務主任者とは異なり、マンション管理士だけができる業務はないのです。
とはいえ、マンション管理会社で働く場合、マンション管理士の取得はおすすめです。マンション管理士の取得がマンション管理会社内で管理職への登用要件であったり、マンション管理士の資格手当が設定されている会社もあるからです。
管理業務主任者試験とマンション管理士試験の出題範囲は、ほぼ同じといえ、ステップアップに良いといえます。
管理業務主任者・マンション管理士・宅地建物取引士を取得することを不動産三冠資格(トリプルクラウン)といわれたりします。
最短で達成するルートは以下の記事になりますので、三冠を狙っている人は参考にしてください。
»【トリプルクラウン】不動産三冠資格を取得する最短ルートの合格方法
まとめ
管理業務主任者資格は、独占業務がありマンション管理会社で働く場合、必須の資格だといえます。
・管理受託契約締結前の重要事項説明
・重要事項に関する書面への記名・押印
・管理受託契約書への記名・押印
・管理事務に関する報告
資格手当が付くことの多い資格ですので、マンション管理会社だけでなく不動産業界で働いている人、これから働こうと関心のある人は、資格取得を目指すことをおすすめです。
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